アラーム0645

あの頃、私は朝起きて家の天井をぼんやり見た。
白い天井の角から角へ少し光りが走るような線を眺めて、なぜ目が覚めるんだろうか。と思う


だって、あの人は目が覚めないままに死んでしまったのに私は目が覚めるんだな、という罪悪感もある。

目が覚めても、上司との気まづいストレスのあるあの、なんとも言えないイヤな感じが、いま
まさに今、嫌な感じで注意されたり無視されたような、あの感じが目が覚めたとたんに現れて起きたばかりなのに胸がザワザワして足がゾワゾワと冷えてくる。

朝6時45分。
私は、それを忘れるために、子どもの弁当箱を並べて、冷凍食品を探して皿に並べて、解凍した。

朝、自転車に乗るのは子どもより早い7時30分だった。

東に登る朝日を顔に浴びながら、いつか終わる。いつか終わる。と言い聞かせて出勤したんだった。

お金が欲しいだけだった。クビになったらまたすぐ仕事は決まる。

いつだって、収入源は使い捨て。
だから私も使い捨てされていたい。

パートを家庭の都合で、ただの収入源にしてきた私に、仕事のやりがいや長く人間関係を良くしたいと思う気持ちは無かった。

子どものために。
学費のために、困ったらすぐ出せる現金のために。クビになったらすぐまた再就職できるスキルをつけるためだけに。

だれも信用してない。
信頼しない。
 
なんとなく仲良くしてれば良い。

尊敬できる人に出会えない。
好きな人がいない。

アラーム0645

アラーム設定を削除した。
あまりにアラーム設定が多かったから。

いまは、アラームはいらない。
10時まで寝ている日もある。

こんな日のためだった。

まだみんなは6年前のままかな?
胸を締め付けられながら起きて、うつむいて歩く。いつか終わるいつか終わる、と頭でつぶやいているかな。
続けられなかった私を思って、元気になるかな? アイツは弱虫だったな、と。


私は、想像していたとおりに、一度は到達したかった習い事をする主婦になれたよ。
習い事をしている主婦だよ。

作業、時間、ミス、無い昼休み、行けないトイレ、胸が締め付けられる上司の無意味な嫌味、
親切や優しさから1番遠い毎日毎日。
大きく引かれた社会保険料

習い事をして、勉強して、毎日のように家計簿みて。

あの朝、私はそうだよ。
必ず、こんな毎日は終了させてやる。
と思っていた。